ムーミン谷の彗星というのを読みだした。
岸田今日子の色っぽい声でおなじみの例のムーミンの原作と思われるやつだが、
なんだか変なのだ。
ムーミンパパが橋を作ったせいでねぐらがなくなってしまった「じゃこうねずみ」が夜に訪ねてくる(P29)。そしてムーミンパパに尋ねる。
「ここは、どういう家なんか」
「ごくふつうのムーミンやしきですよ。
突然訪ねてきて「どういう家なんか」という問いが相当におかしいが、
ムーミンパパの返事もどうかと思う。
「ごくふつうのムーミンやしきですよ。
などという応え方があろうか。
まだ読んでいる途中だが、
「ごくまれなムーミンやしき」をムーミンパパがムーミン谷の他の地所に建設した様子はないし、
「極めて遊び心にあふれたファンキーなムーミンやしき」も登場していない。
絵本や童話はかなりの部分がそうだといえばそうなのだが、
お話の展開(P43まで)もかなり強引だ。
この「じゃこうねずみ」が訪ねてきた晩に変な雨が降る→
翌朝、外がいろいろ真っ黒になっている。「じゃこうねずみ」が不吉なことを言う→
ムーミン(&その子分的なスニフが)怖がる→
ムーミンママ、ムーミンを心配がる→
ムーミンパパ「ムーミン達を天文台へ行かせよう」→
ムーミンママ「そうね、そうしましょう」
なんでよ?
まあね。
じゃこうねずみが宇宙は広くてでっかくて地球はちっぽけで、怪物とかたくさんいて、地球は滅びるとか、子供相手にとんでもない大人気のないこと言うからムーミンとスニフが怖がって、
じゃあ、星をいつも見ている天文台に行って聞いてくればいい、とムーミンパパが提案するんだけど、
天文台ってのは「おさびし山」という危険な山の奥地にある。
元冒険家で博識のムーミンパパであることから、当然ムーミンパパも天文台がある地域が危険なことは承知なのだ。
ムーミンパパ、呑気に著述業とかしてねえで、大人なんだから自分で行けよ。
そんで、ムーミンとスニフの冒険が始まる。
スナフキンさんと出会う。
いろいろあって、使っていた筏が沈んでしまう。
コーヒーが大好きなムーミンはコーヒーポットも沈んでしまったことを嘆く。
以下引用。
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「いかだが、なくなっちゃったぞ。コーヒーポットは、地の底へ落ちてしまったんだ。コーヒーなしでどうしたらいいんだ」
「小さなパンケーキを食べるさ」
と、スナフキンはいいました。
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このスナフキンも相当にとぼけている。
「コーヒーが無いなら水でも飲むさ」と、吟遊詩人的にクールに決めてくれるかと思ったらパンケーキだ。
いやいや、それ全然解決になってないから。
喉乾くから。
この直後は、会話ではなく地の文が続く。また引用。
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そこで、三人(ムーミン/スニフ/スナフキン)は火をおこして小さなパンケーキをつくり、やけるそばから食べていきました。そうするのが、これの正しい食べ方なのですよ。
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突然「なのですよ」じゃねえよ。誰に言ってんだよ。
飲み物はどうなったんだよ。
喉乾くから。
その後、コーヒーの件は未解決のまま話は進む。
いろいろあって、ムーミン達は「スノークのおじょうさん」に出会う。
アニメではノンノンとかフローレンとか呼ばれてるチビカバ女だ。
正確には「おじょうさん」の痕跡を見つける。
「おじょうさん」が装着していたと思われる足輪を拾ったとたん、
もうムーミンは「このあたり、女の匂いがしやすぜ」的にムンムンになる。
以降、まだ見ぬ女の心配ばかりしていやがる。
その一つ。
暇にあかして、ムーミンはスナフキンと一緒に崖の上から石を投げる。
その後、崖下に行くと、さっき自分たちが投げた石のせいでがけ崩れみたいになっていて驚く。
ムーミンが言う。
「大失敗だ。あれは人ごろしだ。あの石が、スノークのおじょうさんの頭にあたったら」
まあ当然だ。危ない危ない。
そんで、崖下には昆虫博士の「ヘムルさん」がいた。
ムーミン達のせいで頭にたんこぶができていた。
ムーミン達が起こした山崩れのせいで、ヘムルさんが言うには「もう少しでつぶれそうだった」(P111)。
なんてことだ。大変なことをしてしまった。実際に頭にも当たっていた。
ムーミンどうしたか。
なんと無視する。
空の色がどうの、赤い彗星がどうのと関係ないことを言う。
次。
ムーミンとスニフとスナフキンは命綱でお互いをつないで歩いているんだけど、
そこへ誰かの悲鳴が聞こえた。甲高い悲鳴です。女の声だ。
ムーミンどうしたか?
鉄砲玉のように走り出しました(P114)
ついていけないスニフは綱に引っ張られて地面を引きづられてしまう。
なのにムーミン逆ギレ。
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「ちくしょう、こんなつなは、早くはずせよ」
と、ムーミントロールはおこりました。
「きみ、悪いことばを使ったな」
と、スニフがいいました。
「それがどうした。悲鳴をあげてるのは、スノークのおじょうさんなんだぞ。ぼくはちゃんと知ってるんだ」
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もう、女一直線。
知ってるとかそういうことじゃなくて、一旦謝れよムーミン。
ムーミンの発する罵詈雑言もちょっと、なんだかなあ、なのだ。
悲鳴のしたところへ駆けつけてみると、案の定スノークのおじょうさんは「アンゴスツーラ」とかいう怪物植物に襲われている。
以下引用(P116)。
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「やい、この炊事ブラシめ」
ムーミントロールがどなりましたが、アンゴスツーラは、平気の平左でした。
「ひょっとこやろう、おいぼれねずみ。おまえは、死んだぶたの昼寝のゆめみたいなやつだな」
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これを聞いたスニフは「すごいなあ!あんなにたくさん、悪口をいえるなんて」
と感心するんだけど微妙だ。
まあ、一度は使ってみたい気もするけど。
「やい、炊事ブラシめ!」
「この、ひょっとこやろう」
「覆水盆に返らず」を英語で"It's no use crying over spilt milk."(こぼしたミルクを嘆いても無駄) と習ったかと思いますが、フィンランドでは"Eat small pieces of pancake when you lost a coffee pot."(コーヒーポットをなくしたならパンケーキでも食べなさい)と言います。
返信削除もちろん嘘です。
ふう。
返信削除あぶねえ。騙されるとこだったぜ。
”死んだ豚の昼寝の夢”、一度見てみたいっす(笑)。
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