2013年8月22日

ワールド・ウォーZの場合(ゾンビ4)


(昨日の続き)
で観に行ったのがワールド・ウォーZ
http://www.worldwarz.jp/
(以下、ものすごいネタバレなので、これから観る予定の人は読まない方がいいです)


新聞評で、
「フィラデルフィアが壊れていくさまがすごい」
みたいなことが書いてあった。
その通りだった。
最初、街なかで渋滞にはまって、
なに?なになになに?なにが起きてんの?
の切迫感がよくてかなり引き込まれる。

主人公の運がラッキーマンよろしく良すぎ
みたいな評をネットでみかけたけど、その通りだと思う。
でもいいじゃんそんなの。
ずっと不運なヒーローの映画なんて観たくないよ。

それよか思ったのは、
なんていえばいいのか、アメリカにおけるゾンビの常識感というか。

ゾンビに噛まれるとゾンビになる。

まあ、常識ですわな。
これが非常に浸透しているというか、大前提になっている。
というのも、

フィラデルフィアでゾンビに噛まれている被害者を初めて見たピットさんが、数をカウントしている。

何してんのって思ったら、後で分かったんだけど、
噛まれてから何秒でゾンビになるのかを計っていたのだ。
それまで、元国連の職員というかエージェントだったんだけど、映画のその前には、今は普通のお父さんだよっていう描写しかなく、

ゾンビに噛まれたらゾンビになる

がこのたびの騒ぎの原因として広く流布している状況とは見て取れなかった。
だとすれば考えられるのは、
世界中がゾンビ渦になるずっと以前にすでに常識になっているということで。
それを支えているのはなにかといえば、
アメリカが誇るこれまで数限りなく作られてきたゾンビ映画なんだろうって思う。

アメリカでは、

父:「ヘイ、マイキー。ホームセンターに行ってきたぜ。いかしたショットガンだろ」
息子:「わあ。これでゾンビが来ても安心だね」
母:「あら、お帰りなさい。屋根裏部屋を掃除しておいたわ。ゾンビが来たら逃げられるようにね」
息子:「屋根裏部屋に隠れるのはテッパンだもんね」
母:「あら、お父さんはいいけど、私のは?」
父:「寝室用にハンドガンを買っておいたぜマイハニー」
母:「素敵。でも」
父:「なんだい」
母:「もし私が噛まれたらすぐに撃ち殺してね」
息子:「いやだよママ。そんなこと言わないで」
父:「大丈夫だよマイキー。そのときはみんなで噛み合えばいいのさ」
息子:「そっか。そしたらみんなゾンビだから大丈夫だね」
母:「やだ、パパったら」
一同:「hahahahahahahahaha」


という会話が、
日本で言えば地震に備える家族会議のようなものが、
全米では、ゾンビ対策会議となって日常的に行われているのだ。


ピットさんが韓国の米軍基地に立ち寄った際に、
そこの隊長さんが以下のようなことを言った。

「ゾンビは頭を撃つんだ。それ以外でやつらは倒れやしねえ」

ゾンビはヘッドショットで倒す

この基地はすでにゾンビだらけになっている。
闘いぬいて生き残った者のセリフとして傾聴に値するが、
何故頭を撃つのか、
という言及がほぼ無い。
「そうだね。了解」って感じでピットさんも流している風だ。
だとすれば考えられるのは、

ゾンビはヘッドショットで倒す

が、
ゾンビ渦が世界に蔓延する以前に全米に流布しているからに違いない。

カプコンの例のゲームの影響も大いに考えられる。
ヘッドショットは弾丸の節約になり得点も高い。
多くのアメリカ人がこの知見を共有しているからこその「そうだね。了解」なのだ。

もうひとつは、

ゾンビは一度死んでいる 生前のその人とは別物

リビングデッドという別称があるように、
1回死んでいるのだ。
というゾンビ物の「常識」を登場人物の誰一人として疑っていない。

映画では、ゾンビが溢れてしまった原因は謎のウイルスの蔓延ということになっているんだけど、
だったら、そのウイルスをなんらかの方法で退治すれば、
一度ゾンビになってしまった人も病気が治癒するように治り、日常の生活に戻れるのではないか、

という可能性が一顧だにされない。
日本でこういうことが起きた場合、
誰もが頭に浮かべて考慮するのは、例えば仮面ライダーで、ショッカーの悪者を退治したとたん、目の下になぜかクマができて悪さをしていた人が、元の善人にケロっと戻ったりする--という可能性だ。

そういう可能性はないのか、おいおい、殺しちゃって大丈夫なのかよ、
ってことを、この映画のなかの人は誰も考えない。
最後の描写でなんか、あらまあ殺す殺す、折り重なったゾンビの山を燃やす燃やす。

あと気になったのはあれだ、
走るゾンビ。

もう、全速力。
ごちゃっと固まって、全員が全速力でこっちに来る。
怖い。
ゾンビさんはいつからあんなに走れるようになったのか。
イメージとしては、ゆらゆらしながら両手を前に伸ばしてゆっくり迫ってくるものだったけど。

あと、
墜ちるヘリ

前回紹介したカプコン製ではないだろうが、
エルサレムでピットさんを迎えに来るヘリが出てきたとき、
「これは墜ちるな」
とニヤリとしたのは観客で俺だけではなかったはずだ。
墜ち方もなかなかよかった。
ごちゃまんとゾンビがたかって重さで墜ちちゃうという。

良かったのは淡々としたとこだね。
ピットさんが行く先々で、みんなひどい目に遭う。

1)救世主となるべきウイルス学者、韓国の米軍基地に到着早々すっ転んで死亡。
普通、こういう学者って生意気なこと言って主人公とすったもんだやった挙句に死亡、
とか、
すったもんだやった後和解して主人公と友情、
みたいなのが多いけど、死ぬ。
あっさり死ぬ。

2)その基地で、隊長ゾンビ化⇒自殺
完全にピットさんが原因。
音で刺激しちゃダメっつってんのにピットさんの携帯が鳴ったせいでゾンビが稼働する。
それなのに周囲の米兵たちは「携帯電話はお切りください」って飄々としてる。

3)壁で守っていたエルサレム壊滅
これはピットさんのせいじゃないけどね。

4)イスラエルの女性兵士、左腕をゾンビに噛まれる
どうみてもピットさんを守るために噛まれた感じ。
それ見たピットさん、
速攻で腕を切り落とす。

5)エルサレムで乗った飛行機爆発、不時着
ピットさん、飛行機内で手榴弾投げちゃダメでしょ。
躯体が壊れて、空にほっぽり出されちゃう乗客は全てゾンビ化した後ですよ、非感染者はいませんよ、の描写が細かい。

それから、矛盾点なんだけど、
航空路を通じて世界中に感染が広まったってことだけど、
噛まれて十数秒で感染するんなら世界中に拡散できないと思う。
搭乗するときだけおとなしく人間のふりができるなら別だけど。
潜伏期間がある程度あるから感染が広がるんであって。

なんつて、いろいろ書いたけど、
面白いっす。

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