2012年3月8日

お彼岸、熊野経由、伊達政宗


昨日、自宅最寄り駅に着いたのが22時ぐらい。
かったるかったので1メーターだし、タクシーを使った。

行き先を告げる。
近所のセブンイレブンの駐車場だ。ビール買って帰りたいからね。

「ご利用ありがとうございます。ワタクシ、○○交通の○○です。よろしくお願いします!本日はお勤めご苦労様でした!」

元気なおっちゃんだ。

背筋を伸ばし、ウォークマンを切ってヘッドフォンを外す。
ろくに働いてもないのにお勤めご苦労様と来た。
そんな礼儀正しい運ちゃんに対し、ヘッドフォン装着のままでは大人としていかんと思ったのだ。
走り出す。

運ちゃん:そろそろお彼岸ですねえ。

しゃべるタイプの運ちゃんなのだな。
まあ、時候の挨拶程度の話だろう。
暑さ寒さも彼岸までなんて言いますねえ。雪が降ったと思えば急に春めいたり、気温の変化が激しいっすねえ。体調崩しやすいんすよねえ、
なんて答えを用意していると、

運ちゃん:今年はお墓参りに行こうと思ってましてね。

そっちか。サダボウの活躍するお線香の青雲のCMの映像が浮かび、考えを切り替える。
そうっすねえ、ワタシも親父の墓参りしたのはいつだったか、ここんとこ行ってませんわ。
なんて答えを用意しているひまもなく、

運ちゃん:実家の墓参りにね。

自分のことを畳み掛けてくる。まあいい。
そうか。上京してきて働いているのだな。

俺:実家はどちらですか?
運:三重県でして。

ま~た、マイナーな県だなあ。
普通だったら「へえ」で終わるところだぞ。

しか~し、俺は違う。
名古屋で働いたことがあり、三重県もカバー範囲だった。だから、

俺:三重のどちらです

というシャープな質問が即座に可能なのだ俺は。さすがだ。

運:熊野です。

お、熊野か。新婚旅行で行ったとこだ。仕事では百五銀行の支店に行ったことあるぞ。
とはいえ随分前なので記憶があやふやだ。旅行では、なんか立派な神社やら見たな。
俺が返さないので運ちゃんの語りが続く。

運:ひどい洪水でしたでしょう。

ああ、なんかそっちの方で台風の被害があったなあ。あまり覚えていない。
っつうか、もうセブンイレブンまで半分近くの行程にきてるんですけど、
その話長くならない?

俺が返さないので運ちゃんがまだ続ける。

運:田んぼがね。

え?何?
頭がめまぐるしく回転する。しかし空回りだ。今度は田んぼか。
いったいこの話はどこに向かうのだ。
というか、やっぱその話長くなるよね。ね、もう着いちゃうよ。

運:昔は田んぼがあって、洪水もそれで防げたんだけど、人間がね。

人間がどうした。田んぼを作ったのも埋めたのも人間だろうに、

というツッコミはせずに、

俺:ああ、田んぼは保水力がありますからね。バカにできませんよね。宅地造成が

などと胡乱な答えをする。まあそういうことが言いたいんだろう。

運:そうなんですよねえ。まわりみんな床下浸水とかになったんですけど、うちは大丈夫で。

俺:よかったですね。

運:ええ。それで墓参りに。

一瞬分からなかったが、
床下浸水を防いでくれたご先祖様のご加護に感謝する意味で、
久々に三重の田舎に帰って墓参りをしようということらしい。
やっとお彼岸--墓参りとつながった。
そういうことだったのか。

( ;∀;) イイハナシダナー
じゃないか。
運ちゃん、俺を降ろして、何人か乗せて稼いだら元気で行ってこいよ。
そして元気に戻ってくるのだ。
そんでまたお勤めご苦労様でしたって元気に挨拶してくれ。

しかし終わらなかった。
もう、神社の交差点曲がって坂を上ったら着いちゃうのに。

運:速玉神社にお参りしたことがありましてね。かみさんと。

あ、神社の交差点名見て思い出したろ、さては。まあいい。
それは熊野三山のどれかだな。新婚旅行ではそこにも行ったはずだ。しかし記憶があやふやだ。

俺:那智の滝があるとこでしたっけ。

タクシーが交差点を曲がる。

運:それじゃなくて。

じゃあ、どれだ。説明もなく運ちゃんが続ける。

運:熊野の人たちは中国と密貿易していたらしいですね。そういう本読んだんですよ。

おい。速玉神社はどこ行ったんだよ。くそう。

しかしだな、油断したな運ちゃん。
ところがどっこい俺はついていけるんだよ。そっち方面にも。

俺は「海と水軍の日本史」とか読んでいてそのへんはちとうるさいぜ。
新婚旅行行ったときも、どこだか忘れたが熊野水軍の隠れ家と称する断崖絶壁の下の洞窟みたいのも見た。
ふふ、こっからは俺がリードする番か。

と思いつつも密貿易なんて知らねえ。だいたいいつのハナシだよそれ?

熊野水軍と源平合戦の話なんかをして巻き返すか、
などと頭を高速回転させているすきに畳み掛けられた。
ってゆうか、こんなことしている間に坂上っちゃったんですけど。

運:長崎もそうなんですが、徳川幕府ってのはひどいねえ。カネのあるところから取ってく。

もう、何?
なんのハナシ?

運:特に伊達政宗ってのがねえ。あれは随分長生きだったんでしょ?
俺:ああ、お城で戦国時代のハナシを将軍様に聞かせる役やってたんすよね。

かろうじて返す。まさかの伊達政宗。
幕府のカネを捻出するために伊達政宗が密貿易してる熊野やら長崎の人から徴収したってこと?
分からん。

なんてうちに着いちゃった。

「710円になります」、「領収書ください」

のやり取りの最中にも、

運:しかし、その頃のキリシタンも可哀想だよねえ。

と続く。
天草四郎とかそのあたりで返せばどうか、など、引き続き俺の頭が空転するが、
答えに窮していても構わずドアが空き、

運:ありがとうございました~。

えっと、キリシタンがなんだって?お~~い。

あのさ。いいんだけどさ。
1メーターなりのトークの尺を考えようよ。


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